頭の運動

問題No.6366 【推理クイズ】HAND ON YOUR HEART 前編

出題者:胡桃◆[17b1152]

その部屋は静まり返っていた。

窓のないこの薄暗い空間の中央には、木製のテーブルをはさんで
若い男と初老の女が重苦しい雰囲気で椅子に腰掛けている。

ハンディカムはテーブルの手前と下、さらに天井に設置されており、
死角のないこの部屋の様子は、外で待機しているスタッフの手に
よって全国に生中継されている。

「あなたのお名前は」
男が落ち着いた口調で切り出した。
女は緊張した様子を隠し切れずに唇を振るわせて答えた。
「さ、、佐藤です」
ピンマイクは女の鼻息まで生々しく拾っていた。
「佐藤さん、今回はこのゲームにご参加いただくためにご応募いただき
ありがとうございました。いつも私の番組をご覧いただいているのですね」

男の名は榊原 悠。もちろん芸名ではあるが、破天荒なパフォーマンス
で超能力の存在を証明しようとする時の人だ。今年四十二になる榊原
だが、そのフェミニンなマスクで多くの女性ファンを虜にしている。

「私は七才の時に家出をしました。何故だかわかりますか」
「い。。いえ。。」
「ある日母親にね、こっぴどく怒られたんですよ。『あんたって子は人様に
 また迷惑をかけて。ウソばっかりついて』ってね。それで衝動的に飛び
 出したってわけです。ですから学校なんて行ってません。それでもこうして
 有名になれた。これはすべて私の超能力のおかげなんです」
「じゃ、いつかお母様にも会える日が来るかしら」

佐藤がそう切り返すと、榊原の口元に笑みがこぼれた。
「ようやくリラックスしてくれましたね。それではゲームを始めましょう」

榊原がテーブル正面のカメラに向かって合図をすると、やや間が空いて、
ドアが開き、外からスタッフが二人入ってくると、一人は拳銃とヘッドホンを、
一人は大きな銀の箱とペットボトルをテーブルの上に置き、部屋を立ち
去った。

この後、榊原はまず自分に仕掛けがないことを証明するため立ち上がり、
イヤホンその他仕掛けとなりそうなものがないことをみせた。銀の箱に詰め
られた二十四発の銃弾のうち一つを、榊原自らが選び、拳銃の弾倉を開け
ると、弾倉の六つの穴の横には小さく1〜6と数字が書かれているのを
視聴者も確認することが出来た。榊原が銃弾を弾倉に詰め、佐藤に
ヘッドホンをさせると、部屋の奥の花瓶目掛けて引き金を引き、花瓶を
木っ端微塵にした。もちろんこの一部始終はCMを挟まずに全国の
お茶の間に流れている。

「佐藤さん、それではここからが本番です」
佐藤が一層緊張した面持ちとなりながらも、榊原の指示に従い、箱の中
から銃弾をもう一つ選んだ。
「この拳銃をお持ちください。少し重いですよ。私が目を閉じている間に
机の下で弾倉のいずれかの穴に銃弾を詰めてください。そしてその弾倉
に書かれた数字を覚えておいてください。詰めたら弾倉を元に戻し、
わからないように好きなだけ回転させてください」 
「は、、はい」

佐藤は机の下で手を震えさせていた。しばらく考えた挙句、弾倉に銃弾
を詰め込んでいる間、お茶の間は目を閉じたままの榊原を映していた。

−HAND ON YOUR HEART 後編に続きます−


※ 問題中に使用されている人名、地域名、会社名、組織名、製品名、イベントなどは架空のものであり、実際に存在するものを示すものではありません。

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HAND ON YOUR HEART 前編への最新コメント

[48720] そういうことか・・^^
 投稿者::k◆[4c5b964]#[正解者] 投稿日時: 2008-05-24 06:34:11
なるほど・・わからないけど・・^^
ありがとうございます


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HAND ON YOUR HEART 前編の情報

問題作成日:2008-05-23
解答公開日:2008-08-23
正解率:3% (正解回数:23 解答回数:710)

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