問題No.598 【暗号クイズ】奇貨居くべし

出題者：きいみ◆

「入るよ、加奈」
僕はノックをした後、なるべく音を立てないように病室のドアを開けた。
加奈はベッドの端に腰掛け、顔を手鏡に映しながら髪をとかしていた。
「正月だって言うのに大変だよな」
「全くだよ。振袖を着たかったのに」
　去年の暮れ、加奈が事故にあったと電話で聞いたときは
胸が潰れるかと思ったが、本人曰く、綺麗に骨が折れたそうで、
もう歩ける程度には快復している。
忘年会に出席し損ねて、好きなお酒が飲めなかったと
冗談めかして愚痴ってはいたが、大事に至らなくて本当に良かったと思う。
ただ、体調が快復してくると暇を持て余すようで、
ベッドの傍らには差し入れの本が詰まれていた。
「動けないと本当に退屈。でも、おかげで好きな推理小説は
　いっぱい読めたけどね。･･･あ、そうだ」
　思いついたように、加奈は枕元に置いてあったメモ用紙にペンを走らせた。
「小説に分からない言葉が出てきたんだけど、これなんて読むの」
　差し出されたメモ用紙には、奇貨居くべしと書かれていた。
「きかおくべし。昔、呂不韋という名の商人が人質になっていた王子を助けて
　後で上手く利用したことから、珍しい品物を買っておけば、後で大きな利益を
　あげる材料になるという意味になったんだ」
「リョフイってどんな字をかくの」
　空中で指を動かしながら教えてやる。
　加奈の感心したようなまなざしに少し得意な気持ちになり、言葉を続けた。
「でも、そこから転じて得がたい好機を逃すな
　という意味も最近ではあるみたいだよ」
「ふぅん、一つのものに二つの意味があるんだ･･･二つの意味かぁ」

　加奈はしばらく考えこんでいたが、おもむろに
先ほど文字を書いたメモ用紙を半分に折った。
　前半部分が裏に折りこまれ、『くべし』という文字しか見えなくなった。
加奈は悪戯っぽい目を僕に向け、右手で摘んだメモを
僕の鼻先に突き出すように伸ばした。
「もうほとんど良くなったからこれが欲しいな。呂不韋さん」
　三文字の平仮名を突きつけられ、一瞬、何を言っているのか分からなかったが、
加奈が胸元に寄せるように持った鏡に、三文字の言葉が映るようにして
こちらに見せているのを見て意図を理解した。
なんてことはない暗号だ。
「好感度アップのチャンスよ。得がたい好機を逃さないようにね」
　ははぁと大仰に頭を下げると、ちょっと待っていてといい残し、
僕は病室を出ていった。


<問題>
加奈がほしがったものを平仮名３文字でお答えください。


※　問題中に使用されている人名、地域名、会社名、組織名、製品名、イベントなどは架空のものであり、実際に存在するものを示すものではありません。

奇貨居くべしへの最新コメント

>ゅりぴーさん
おめでとうございます。
この言葉はなかなか普段の日常会話には
登場してきませんから仕方ないかもしれません。
でもちょうど、問題文の時期になりまして、
正解の言葉も耳にする機会が増えますので
正答率もが増えるんじゃないかなぁと
思っております。

>いりこさん
ありがとうございます。
楽しんでいただけてなによりです！

暗号を解いて正解したのですが、
言葉の意味知りませんでした笑

楽しい問題でした。

>かおりんさん
心理描写は控えたのですが、
バックストーリーまで感じていただいて嬉しいです！

>かえるさま
挑戦していただいて有難うございます！
一生懸命取り組んでいただいているのをみると
問題を作ってよかったなぁという気になります。
問題製作者として幸せです。
本当にありがとうございます。

>うきさん
ありがとうございます。
暗号問題、推理問題どちらに解釈しても
解けることを目指して作りましたので、
そういっていただけると本当に嬉しいです。

恋人と　愛を深める　知恵遊び

・・・って感じの風景ですね。

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奇貨居くべしの情報

問題作成日：2006-07-04
解答公開日：2007-01-04
正解率：16%　（正解回数：1615　解答回数：10035）

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