問題No.4129 【推理クイズ】この手で抱きしめるまで…
出題者:ソボロン◆[d5ea92d]
今は昔…
さる貴族の屋敷に、一人の娘がいた。
娘は病弱で、屋敷の外へは出られず、日に一度婆やに付き添われながら庭を散歩することが一番の楽しみだった。
部屋の縁側からほどなく近い、燈籠の並ぶ路を抜けると、小さな石橋をかけた池があり、そこでしばし水面を眺めその身を休めてから、その先に続く小路を抜けて、屋敷の入口に戻ってくるだけの、短い散歩道ではあったが、娘の弱々しい足にはそれでも精一杯だった。
日によっては、途中で具合が悪くなって引き返すこともあったくらいだから、その病は確実に娘の儚い命を削っていたのである。
娘は、恋のひとつも経験することなく、寂しい時を過ごしていた。
そんなある夜、娘の寝室の障子向こうに突然青白い影が現れ、娘に寄せる恋心を語った。
「そなたを毎日のように見上げては、恋にこの身を焦がしている。どれだけ見ていても飽きぬ。毎日別れのくる時が辛い」
娘は最初夢でも見たのかと思ったが、青白い影は毎晩のように想いを伝えに現れた。
そのうち、娘は床に伏せてしまい、庭に出ることもなくなった。
それでも、青白い影は毎晩のように障子向こうに現れた。
「そなたに会えなくなり、心張り裂けんばかり…会いに行きたいが、今は叶わぬ…抱きしめたいが、それもまだ叶わぬ…」
そんな募り事が、幾晩も続いた。
一つの季節が終わる頃、娘の身体は尚弱り、同時に例の青白い影が現れるのを心待ちにするようになっていた。
その頃になると影は、優しくこう告げた。
「間もなく、期は満ちる。そなたのもとへ赴くこと叶う。この手にそなたを抱きしめることも」
娘は、落ち窪む目を細めて、その声に頷くのだった。
さて、この「青白い影」とは実は何かの化身なのですが、その正体を漢字1文字で答えてください。
※ 問題中に使用されている人名、地域名、会社名、組織名、製品名、イベントなどは架空のものであり、実際に存在するものを示すものではありません。
この手で抱きしめるまで…への最新コメント
[36672] (無題)
投稿者::写鍵◆[12b1e16]#[正解者] 投稿日時: 2007-09-06 23:35:05
ずっと「鯉(恋)」だと思ってました。[36478] (無題)
いいお話です。
投稿者::有希◆[d51c358]#[正解者] 投稿日時: 2007-09-03 13:53:50
とても切なかったです。[36040] (無題)
じんときました。
投稿者::フック◆[0043082]#[正解者] 投稿日時: 2007-08-28 20:15:33
わかってよかったです。[35462] (無題)
投稿者::とこきち◆[2f67edf]#[正解者] 投稿日時: 2007-08-21 09:49:32
解説を読んで、「そう来たか!」と思いました(笑)。[35370] (無題)
投稿者::影法師◆[b787e34]#[正解者] 投稿日時: 2007-08-19 21:19:45
できたw
ちょっと難しかったかもw
この手で抱きしめるまで…の情報
問題作成日:2007-08-09
解答公開日:2007-09-09最終更新日:2007-08-09 22:26:45(更新回数:1)
更新内容:
誤字を直し、文脈のおかしなところを2、3訂正しました。-------------------
2007/08/09 (Thu) 22:17
正解率:7% (正解回数:344 解答回数:4747)
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