問題No.3801 【推理クイズ】噂の刑事ディランとキャサリン1 前編
出題者:あんぱん◆[c96f4b4]
「みんな死んでいた」前編
シカゴ市警のディラン警部は、その緊急通報がパラタイン地区からだと聞いて、
ちょっと気が重くなった。しかも、東洋人が4人も死んでいるという。
パラタイン地区といえば、つい最近、大がかりなIRS(歳入局)の監査があり、
アジア系企業が軒並み追徴課税を宣告されたばかりだった。
個人所得についても同様だったと聞く。
捜査への協力をあまり期待できそうになかった。
「それでもさ、パトカーと見ればいきなり銃撃されるサウス地区よりはマシかもよ」
部下のキャサリン(刑事)にそう言われて、しぶしぶパトカーに乗り込む。
「ちゃんと英語の通じる発見者だと良いけどな」
ディランはもう一言、文句を吐き出してから、パトカーを粉雪の舞うシカゴ大通りへと発進させた。
事件現場はパラタイン地区西、川沿いのこぢんまりした住宅地で、
言われた通りに目印の小さなもみの木の角を曲がると、薄青にペイントされた一軒家が見えてきた。
2階建てでテラスには洗濯物が風に揺れている。
「雪模様だっていうのに、外に出しっぱなしだ。
あんなことをして近所からクレームが出ないのかいな」
「このあたりはみんなああいう習慣じゃないの? ほら」
ちょっと離れた5階建てのコンドの窓からも、
部屋の中に下着らしいものがぶら下がっているのが見えた。
「ああ、確かに。窓のカーテンも開けっぴろげだし、ちょっとしたカルチャーショックだな」
問題の一軒家では、玄関を入ったところで、太った制服警官と背の低い東洋人の女が眉を寄せていた。
家の中は充分すぎるほど暖房が効いていたが、厚手のコートを着たまま、
ディランとキャサリンは市警バッチを女に見せた。女が頷く。
「カズエ・カネハラ、この家に住んでいます」
その発音を聞いて、ディランの第1の不安はとりあえず解消された。
「よかったわね、英語で事情聴取ができそうよ」とキャサリンがすかさずウィンクする。
「ああ、心から嬉しいよ。幸運を神に感謝しよう。だが尋問よりも、まず現場を見ようか」
「中で4人死んでいます。それぞれ別々にですが。
みんな東洋人・・・いや、正しくは日本人のようです」
太った制服警官、ジョンが説明した。彼はパラタイン地区の警ら係だった。
「別々にっていうのはどういう意味?」
キャサリンが手袋をはめながら尋ねた。
キャサリンの大きな青い目に見つめられると犯罪者ですら一瞬息を詰めると言われている。
例に漏れず、ジョンも思わず息を飲んでしまった。
「は、はい、4人はそれぞれ、別々の部屋のベッドの上で死んでいるということであります」
「そう」
直立不動の姿勢になったジョンに相づちを打つと、キャサリンはディランを見た。
「第1発見者は?」とディラン。
「私です」ジョンの後ろから、さきほどの東洋人の女、ミセス・カネハラが声を張り上げた。
「今朝、友人の家から帰ってきたら、主人がベッドの上で死んでました。それで警察に電話したのです」
英国訛りのアクセントだった。ディランが鼻を鳴らす。すかさず、ジョンが後を継いだ。
「それで私が駆けつけまして、ユキヒデ・カネハラ、
彼がミセス・カネハラの夫ですが、彼の他にゲストルームのベッドの上で、
あと3人の男が死んでいるのを発見しました。
名前が、一人目はカツキチ・タケシタ、二人目が・・・」
「ジョン! 名前は紙に書いて寄越してくれ。
東洋人の名前なんて一度聞いただけではとてもじゃないが、覚えられる気がしないんだ」
「イエスサー」
ジョンがまた直立不動に固まった。
後編へ
※ 問題中に使用されている人名、地域名、会社名、組織名、製品名、イベントなどは架空のものであり、実際に存在するものを示すものではありません。
噂の刑事ディランとキャサリン1 前編への最新コメント
[32432] (無題)
投稿者::メンタルくん◆[4d216c1]#[正解者] 投稿日時: 2007-07-11 04:43:22
極寒の地では凍らせないためにそこに入れると・・・[32414] (無題)
投稿者::ハタ◆[7c80e23] 投稿日時: 2007-07-10 21:19:52
なるほど、、よかったです。
噂の刑事ディランとキャサリン1 前編の情報
問題作成日:2007-07-10
解答公開日:2008-01-10
正解率:31% (正解回数:93 解答回数:300)
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