頭の運動

問題No.23029 【推理クイズ】捻れた悪意の起点

出題者:Toto◆[36f096a]

1948年1月25日 某県某所

気がつくと僕は、畦道のど真中にいた。この時期の風は「吹く」などという優しい表現は似合わない。「刺す」が最も適当な表現であろう。風上に向かって歩くこと10分、集落が見えて来た。行き交う人も少なく、表情は皆決して良いものではなかった。

風に飛ばされた新聞を読み、どの時間に飛ばされたかを確認する。

「今晩は平野部で雨が降るのか...」

ふと顔を上げると、いきなり肩を掴まれた。

幸運なことに休む場所はすぐに見つかった。

「お前がやったんだろ!」

近くの交番に連れて行かれ、刑事の恫喝。全く話にならない。

「水嶋先生。遠路はるばるお呼び立てして申し訳ございません。」

若い娘が刑事に事情を説明してくれたおかげですぐ釈放された。

綾子(先程の若い娘)は、刑事たちの非礼と迎えに来なかったことを詫びた。ちなみに、水嶋は東京帝国大学工学部で教授をしていて、綾子は教え子である。


「君のお母様が亡くなったことを聞いてね。時間ができたので、お線香だけでもと来たのだが...」

「ええ。蔵の中で探し物をしていた母が殺されました。その時私は父と共に市役所(列車で2時間離れた所)から帰ってきたときで。」

「そうか。さぞ無念だっただろう...」

「警察は近くに住む吉木さんという男を疑っておりましたが、吉木さんが亡くなられて...彼の家も燃えてしまいました。」

「辛いところ悪いが、お母さんの事件について教えてくれないか?」

綾子は語り始める。

---事件当日(現在の地点から3日前)、綾子と父親の親兵衛は朝から市役所へ行っていた。用事がすみ、帰宅すると蔵から物音が聞こえ駆けつけると、ヤエの絞殺死体を見つけた。親兵衛が最初に近づき、死亡を確認。蔵の外にいた綾子(この時綾子は動転し、ヤエの足袋しか確認していない。)に近くの交番に知らせに行った。綾子が家から出ると、吉木という写真を生業とする男の後ろ姿を目撃した。

概略はこんな感じだ。ヤエの死亡推定時刻も発見時間から大きなズレはなかった。蔵の物音はまさに事件の最中に起きたものだったと言えよう。その日の夜、吉木に事情聴取がされたが証拠もなかったのですぐに終わった。

綾子から住所を教えてもらい、僕は吉木の家へと向かう。綾子の邸宅から歩いて5分、裏山の入り口にポツンと火災現場はあった。不幸中の幸いだったのは、この近くに住居は他に無く、他に死傷者が出なかったことだ。

たまたま近くを通りがかった消防団の男から火災の状況を聞いた。

2日前の17:30頃にお通夜から帰る時に綾子の邸宅から出ると吉木の家の方から煙と炎が見えた。17:00から降っていた雨も手伝いすぐ鎮火すると思われていたが、火の勢いは増すばかりで手がつけられなかった。家が燃え尽きるまでどうしようもできなかった。七輪から燃えたらしく、無理心中をしたが、何かの拍子で火が燃え広がったと考えられた。

17:00からのお通夜により、関係者全員にアリバイがある。このことから、吉木は綾子の邸宅に盗みに入ったが、ヤエと遭遇し殺害。その後、良心の呵責から無理心中したと警察は推測した。ところが、2人の気道が綺麗だったことから、死んだ後火がつけられたことがわかった。結局、捜査は振り出しに戻った。

僕は燃えた中から丸いものを見つけた懐中時計のようだが...

綾子の邸宅へ戻ると1人の怪しい男が出てきた。僕は彼の後をつけることにした。

---

「いや〜。全く災難だったね!」

僕はなぜか駅前の小料理屋で怪しい男と酒を飲んでいた。

「全く...警察もダメだな!」

「えっ?」

「奴さん(吉木)はな、昨日隣町の凧揚げ大会で写真を撮ってだんだよ。朝から。はなっから心中するくらいならなぜ仕事を引き受けたんだ?」

「それは確かに妙ですね...」

「そういや、写真屋の女将さんから、あんたの教え子のお母さんと奴さんが不倫をしているか調査して欲しいって頼まれたんだよー。で、張り込んでいると、案の定、奴さんがよく出入りしてたんだよねー。奥さんは家族写真の日取りの打ち合わせに来たって言うんだけど、なんていうか、度が過ぎるんだよね...」

熱燗をもう一つ注文した。僕は下戸なので、煮物を口に運ぶ。

「そういや、東京帝国大学の先生だっけ?親兵衛さんもそこ出てんだけどさ。別格なんだよねー。首席で卒業して、今じゃ次期市長って噂されてんだよね。」


結局僕が奢らされる羽目になりその後彼と別れた。
全く風変わりな探偵だ。酔いが回ると人の舌もよく回るものだと改めて思った。さて、死んだ2人に思わぬ関係が浮かび上がった。どこから切り崩そうか...

この日は綾子に近くの民宿を手配してもらった。受付の大時計は10:00を回ってた。普段飲まない酒でだいぶ酔っ払ってしまい。結局、僕は布団の中ですぐに眠りについた。

---

次の日、探偵が電車内で毒殺されたと聞き、僕は警察署へ連れて行かれた。電車内で探偵は飴玉を舐めた途端、苦しみ出したそうだ。小料理屋の女将の証言ですぐに解放された。僕はすぐに綾子の邸宅へ戻った。予定では、明日の夕方までにこの村を出ないといけないのだ。綾子と親兵衛に別れの挨拶をし、綾子が手配した民宿に戻る。つもりだった...

「このまま帰るのは癪だからな...吉木の家を調べてみよう。」

僕は吉木の家へ向かい、手がかりを探した。吉木の家の道を挟んだ向かいに物置小屋を見つけた。中を探すと、写真撮影に使うものから農具まで色々見つかった。中にはこのあばら屋に不釣り合いな厳重そうな金庫もあった。中は気になるが、鍵は無いし...退散しよう。

民宿に戻ると綾子がいた。ここ最近顔見知りが立て続けに亡くなり、ひどく憔悴していた。

「先生。やはり呪われているのでしょうか?偶然が重なりすぎて不気味で...私たち一家に何か恨みでも...」

「いや。犯人と殺害方法は大方見当がついてる。しかし、決定的な物があればな...」

「先生?吉木さんが犯人じゃないんですか?」

「いや、それだと探偵が死んだ理由がわからない。それにまだ吉木夫人が死んだ理由も分かっていない。君はどう思う?」

綾子は詰まる。

「すまない。今の君に聞くことではなかった。忘れてくれ!」

「吉木さん。写真館の仕事が最近上手くいかなくなって、しかも息子さんがビルマ(現ミャンマー)で死んだという報せと重なってから人が変わってしまいました。結婚なんてするんじゃなかった。1人になりたい。家の修繕もできず雨風凌げない。とかよく愚痴をこぼしていたのをよく覚えています。」

前の大戦の悲惨な結末に心を痛めた。しかし、僕はこの事件のあらすじが見えた気がした。綾子を落ち着かせて帰らせた後、僕は明日の朝に備えるのだった。

Q:この事件を推測せよ。

不倫関係にあった吉木が手を下したとは考えにくい。そうなると、一番怪しいのは●(抜き出し)である。犯人は吉木夫妻を殺害したのち、○○○○○○(全角カタカナ6文字)を使った放火トリックを施した。これにより自分のアリバイを確保することに成功した。

記入例:水嶋ブックマッチ


※ 問題中に使用されている人名、地域名、会社名、組織名、製品名、イベントなどは架空のものであり、実際に存在するものを示すものではありません。

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捻れた悪意の起点への最新コメント

[220815] (無題)
 投稿者::爺。◆[be769b1]#[正解者] 投稿日時: 2020-07-11 03:56:58
お世話になります。
[220757] (無題)
 投稿者::迷探偵◆[2a20c7c]#[正解者] 投稿日時: 2020-06-14 07:39:44
お世話になりました。(^^)
[220755] (無題)
 投稿者::迷探偵◆[dfd8fa0]#[正解者] 投稿日時: 2020-06-12 06:58:32
お世話になりました。(^^)
[220683] (無題)
 投稿者::帰ってきたおぢさん◆[681bb94]#[正解者] 投稿日時: 2020-05-16 19:01:51
^^
[220674] (無題)
 投稿者::bowie◆[fcc9cde]#[正解者] 投稿日時: 2020-05-15 00:05:28
 解けたがヒントがなければ時間がかかったろうな。


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捻れた悪意の起点の情報

問題作成日:2020-05-09
解答公開日:2020-08-09最終更新日:2020-05-09 22:26:45(更新回数:1)
更新内容:
--------------------
2020/05/09 (Sat) 22:25
問題文を修正しました。

正解率:5% (正解回数:65 解答回数:1091)

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