問題No.21894 【推理クイズ】ポゲモンＧＯ殺人事件

出題者：鯉の字◆[b9a1657]

「スマートフォンを握り締めたまま息絶えるって、めちゃくちゃ残念な死に方だと思いません？」
　日曜日の「セキエイ公園」で、そんな声をもらしたのは、県警捜査一課のナカムラ刑事だった。25歳独身。女子高生のような幼い顔をしているが、数々の難事件を解決に導いてきた県警きっての名探偵である。
　ナカムラ刑事の目の前には、ナイフで背中を刺された男性の亡骸が、倒れふしていた。
　見たところ、年齢は、20代後半から30代前半。細身の身体をコバルトブルーのトレーニングウェアに包み、長めの黒髪が、赤いキャップ帽ですっぽりとおおわれている。
　その手許には、ベージュカラーのスマートフォンが落ちていた。ＯＮＹ製のエグスペリアＸ４。ナカムラ刑事が使用しているものを同系列の製品だ。
「そもそも、死ぬ間際に、スマホでどこかに連絡をとろうとする発想が、面白くないし。わたしだったら、何かかっこいいダイイング・メッセージを書こうとしますよ」
「おやおや、彼がダイイング・メッセージを残していないとは、まだ決まっていませんよ」
　となだめたのは、江府蘭大学の准教授であるクラシキだ。
　青色のポロシャツ越しに見える、鏡餅のようにどっしりとした肥満体型。学生たちには、「変態トロール」という愛称で親しまれている。「グルメツアー」と称して、警察の捜査に協力することを趣味としており、今回も元教え子であるナカムラ刑事に頼んで、事件現場に連れてきてもらったのだった。
「そのスマートフォンに、なにか面白いものが残っているかもしれません」
　クラシキは、ロールパンのようにふっくらした手で、被害者のスマートフォンを拾うと、スイッチを入れた。
　そこに現れた画面を見て、ナカムラ刑事は、「あっ」と声をあげた。
「ポゲモンＧＯじゃないですか」
　世界中で絶大な人気をほこるアプリゲームだ。ＧＰＳに対応しており、プレイヤーが現実世界を移動すると、それに合わせて、ゲーム内のアバターも仮想空間のなかを動く。そして、あちこちに現れるモンスターたちを捕獲するということが、ゲームの趣旨となっている。
「プレイヤーレベルは、１５ですか。まあまあ、といったところですね」
「教授もやっているんですか？　ポゲモンＧＯ」
　ナカムラ刑事は、眼を輝かせた。
「はい。ダイエットにいいと娘に勧められましてね。始めてから、もう２キロも痩せましたよ」
　クラシキは、誇らしげな表情で、自分のスマートフォンを差し出した。すでに手持ちポゲモンは、百匹をこえている。レベルは２１。これは負けられないぞ、とナカムラ刑事は、闘志を燃やした。
「このあたりには、『ポッボ』と『コラッダ』くらいしかいないようですね」
　スクリーンに表示された「近くにいるポゲモン」という画面に目をやりながら、クラシキは残念そうな表情をした。
「ポッボ」は、鳥タイプの鳩ポゲモン。「コラッダ」は、普通タイプの鼠ポゲモン。どこにでもわんさか現れるようなレア度の低いポゲモンだ。ナカムラ刑事も、ゲームを始めて真っ先にゲットしたのは、この２匹だった。
「少し離れたところには、『トードー』がいるみたいですよ。この地区では、けっこうレアなポゲモンだと思いますけど」
　ナカムラ刑事は、自分のスマートフォンに目を落としながら言った。
「トードー」は、鳥タイプと普通タイプをあわせもつポゲモンである。一つの身体に、二つの頭というシャム双生児のような姿をしている。アメを50個与えると、「トードリオ」に進化し、頭が三つに増えるが、戦闘力はあまり高くない。
「僕は、猫ポゲモンを中心にコレクションしているので、『トードー』は、専門外なんですねえ……」
　クラシキは、しみじみとした表情で言い落す。
　と――。
「ナカムラ刑事殿、大変です！」
　ナカムラ刑事の部下であるカトー刑事が、全速力で走ってきた。
「いったい、どうしたの？」
「二丁目の河川敷にて……『ミュウヅー』が発見されました！」
「なんですって！？」
「ミュウヅー」は、「伝説」と呼ばれるほど、希少価値の高いポゲモンである。「ポゲモンＧＯ」の配信から、一ヶ月ほど経過した今も、その存在は確認されていない。
「ガセじゃないでしょうね！？」
　ナカムラ刑事は、悲鳴をあげるようにして訊き返す。
「ガセではありません。先ほどツイッターで捕獲画像が貼られておりました！」
「わかった。わたしの分もゲットしておいて！」
　ナカムラ刑事は、自分のスマートフォンを、カトー刑事に投げてよこした。
「はっ！　失礼します！」
　カトー刑事は、敬礼をすると、全速力で走り去っていった。
「クソッ、こんな事件さえなければ、わたしも一緒に行けたのに」
　ナカムラ刑事は、被害者の遺体を、憎しみを持った目でにらみつけた。
「まあ、落ち着いてください、ナカムラくん。事件は、すぐに解決しそうですよ」
「えっ？」
「見てください」
　と言って、クラシキは、ナカムラ刑事に、被害者のスマートフォンの画面を見せつけた。
「これ……」
　ナカムラ刑事は、思わず息を飲んだ。
　スクリーンに、トードーがうつっている。栗色の毛。細長い脚。「セキエイ公園」の滑り台をバックに、クリクリした可愛らしい二つの眼で、撮影者を見下ろしていた。「ポゲモンＧＯ」には、見つけたポゲモンを、現実世界を背景にしてカメラ撮影できるという機能があり、それによって撮られたものだった。
「ありましたね、ダイイング・メッセージ」
　クラシキは、白いポーチから、アメ玉を取りだす。それをほおばると、口の中で転がしながら、幸せそうに眼を細めた。
「実においしい」


●備考●
・被害者は、警察の捜査によって、マサラ町出身の無職・サトル（29）と判明した。
・主にサトルとトラブルをかかえていた人物は、以下の通り。

タカシ（34）
　サトルの友人。以前サトルに貸した大金が返してもらえず、「やつは人間ではない」と周囲に不平をもらしていた。医大に在学中。過去に10年ほど、サトルと同居しており、同性愛者ではないかという噂がささやかれていたが、「自分はノーマルだ」と否定していた。目が細い。

カズミ（29）
　サトルの中学時代の交際相手。サトルと別れてからすでに14年ほど経過しているが、いまだに未練を立ちきれずにいた模様。ここ最近は、サトルと交際していた女性に、脅迫まがいの電話を何度も行っていたという。「花田の洞窟」というバーでホステスをしている。

オーイド（74）
　サトルの恩師。サトルが、そこら中で拾ってきた野生動物を持ってきては「飼え」と強要していたため、困り果てていた。江府蘭大学理学部の元教授。最近は、動物たちの世話が負担となって、ダチョウのような見た目になっていた。

・被害者が死の間際に残したダイイング・メッセージが決め手となり、犯人は逮捕された。


【推理！】

＜問１＞
被害者が撮影した写真は、犯人の何を示していたのか？(半角で数字を選択)
1．名前　2．職業　3．容姿　4．属性

＜問２＞
犯人は誰か？（本文から人物名を抜き出し）

以上の答えを、続けて解答欄に入力してください。
例a：1クラシキ
例b：4カトー


※　問題中に使用されている人名、地域名、会社名、組織名、製品名、イベントなどは架空のものであり、実際に存在するものを示すものではありません。

ポゲモンＧＯ殺人事件への最新コメント

>あからさま
藤堂にフリガナを振ったら普通はトウドウでしょう。
『この世界ではトウドウがトードーになる』等の説明がないので
できそこないと言われているんだと思いますよ。

人物名やポゲモンなどを見る限り
できそこないではなさそうですね

良い問題だ(´ω｀*)

正確には●ー●ーではなく
●ウ●ウでしょう。
作り直しなさい。

さすがです！

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ポゲモンＧＯ殺人事件の情報

問題作成日：2016-07-29
解答公開日：2017-01-29最終更新日：2016-12-07 22:01:39(更新回数：9)
更新内容：
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2016/12/07 (Wed) 22:00
ヒント削除
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2016/08/01 (Mon) 23:06
ヒント追加
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2016/08/01 (Mon) 03:48
ヒント追加
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2016/07/29 (Fri) 15:48
全面改稿
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2016/07/29 (Fri) 02:43
誤字訂正


正解率：4%　（正解回数：139　解答回数：3428）

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