問題No.16730 【推理クイズ】第五話『煉獄の闇』
出題者:子供の落書き帳◆[eeeeb42]
*シリーズ物ですので前の話から順に解いてください。
問題編
俺が車掌を務める寝台列車『まつかぜ』は田舎道を走る小さな列車だ。『まつかぜ』は10年前に県が観光産業の発展のために作らせたものだが、観光地も何もない田舎では客足は増えず、現在は月に数本のみ運行している有様である。『まつかぜ』は通常の座席が並ぶ座席車と最後尾にある一両のみの寝台車で構成されている。あの日も寝台車から発せられた呼出音がすべての始まりだった。
夜も更け、日付もそろそろ変わろうかという時間帯。『まつかぜ』は暗い山道を運行していた。運転席には運転手の羽田さんが座り、俺は助手席でうとうと眠りこけていた。その眠りをかき消すように、一つの呼び出し音が運転席内に鳴り響いた。
「寝台車からですね。ちょっと行ってきます」
俺は立ち上がり誰もいない座席車を抜けて寝台車へと向かった。寝台車は全部で四つの個室により構成されている。進行方向を前に前列の左からA1、A2、後列はB1、B2と部屋番号が振られている。呼出音はB2、つまり後列の右側の部屋から発せられたものである。部屋を見ると扉が開いたままになっていた。俺は不審に思い部屋の中を覗いた。部屋のベットには人が倒れていて、腹にはナイフが突き立てられていた。
「ひ、ひとごろし〜〜!」
俺は部屋を飛び出し、一目散に逃げ出した。説明しておくが、俺には『まつかぜ』の運行を守る義務がある。まずは自分の身の安全を確保しようとするのは至極当然のことである。決して臆病風に吹かれたわけではない。気がつくと俺は先頭車両まで戻っていた。すぐに俺は運転席の羽田さんに事情を説明した。
「バカヤロウ! 寝台車には他のお客様もいるんだぞ。お前は殺人者がいるような場所にお客様を置いたまま、ノコノコ逃げ帰ってきたっていうのか。『まつかぜ』の安全が確保できるまで帰ってくるな!」
そう言って俺は運転席を追い出された。ちくしょう、なんで俺がこんな目に合わなくてはならないんだ。それもすべて犯人のせいだ。こうなったら俺が犯人を捕まえてやる。
現在『まつかぜ』の乗客は全部で四人。そのうち、B2の乗客が殺されたので、犯人は残りの三部屋の一人に違いない。俺は三人の乗客にそれぞれ話を聞くことにした。
A1の乗客は20代前半の女性だった。髪は赤く染め上げ、ショートパンツにヘソ出しルックで、腕にはジャラジャラとアクセサリーを付けている。傍から見ても目立つ格好だ。
「アタシの名前は黒蜥蜴紅子(くろとかげ べにこ)。鋼鉄蜥蜴(アイアンリザード)のリーダーをやってる」
「あ、あいあんりざーど?」
「地元じゃ有名なバンドグループだぜ? おっさん知らないのか?」
「お、おっさんだと……それに黒蜥蜴って本名なのか? ちょっと身分証見せろ!」
俺は荷物をひったくり、中からバイクの免許証を見つけ出した。
「山本洋子(やまもと ようこ)22才……って全然違うじゃねーか!」
「うるせーバンド内じゃその名で通ってんだ」
偽名を使うとは怪しすぎる。この女は要注意だな。次に俺はB1の乗客を尋ねた。B1の乗客は四十代前半の中年男性だった。厚手のコートを着て、落ち着きがなく顔色を悪そうにしている。
「こ、こういうものです……」
男は名刺を差し出してきた。名刺には作家 影山文字彦(かげやま もじひこ)と書いてあった。
「またまた大層なお名前で……ってこれはペンネームじゃねえか!」
俺は名刺を中年の顔に叩きつけると部屋の隅に置いてあった荷物を漁り始めた。
「な、何をする……その荷物に触るな!」
俺は止める中年を足蹴に健康保険証を探し当てた。そこには田中幸一(たなか こういち)と書いてあった。中年を睨むとばつが悪そうに下を向いた。
「どいつもこいつも馬鹿にしやがって」
A2の乗客は長身の男性だった。詰襟に外套を羽織り、頭には黒い帽子をかぶっていた。いくら何でも怪しすぎる。
「我が名は天魔狂太郎(てんま きょうたろう)。第六天を統べる……」
俺は何も言わず荷物をひったくり学生証を探し当てた。そこには鈴木一郎(すずき いちろう)と書いてあった。
「お前ら三人とも怪しすぎるぞ。もしかして全員グルなんじゃないだろうな?」
俺は三人を一堂に集めて怒鳴りつけた。
「うるせーアタシはやってねーよ。だいたい死体なんて本当にあるのかよ? おっさんの見間違いなんじゃねーの?」
俺は死体の身元をまだ確認していないことに気が付いた。俺は三人と一緒にB2の部屋へと向かった。部屋にはやはり死体が倒れている。死んでいるのは30代前半くらいの男性のようだ。服装はシャツにスラックスと他の乗客に比べて地味な服装。左腕には時計をはめている。体はベットの上に投げ出され、腹にはナイフが突き立てられていた。よく見ると、足元に名刺入れが落ちている。ニコニコ金融 闇野久雄(やみの ひさお)。聞いたことがある。このあたりでは有名なあくどい闇金業者だ。
「ぎゃはははは、おっさん見てみろよ! こいつ服を表裏逆に着てるぜ」
見ると、死体の男はシャツの表裏を逆に着ている。着替えるときに慌てていたのだろうか?
「どうやら、ナイフは直接の死因ではなさそうだな」
後ろで黙っていた長身の男が口を開いた。死体を確認すると、首には締められた跡が、後頭部には殴られた跡がある。傷の状態から察するに、ナイフは絶命後に刺されているようだ。鈍器で後頭部を殴って昏倒させたあと、首を締めて殺害。最後にナイフを刺したというところか? しかし、首を締めて殺しているのに、わざわざナイフを刺す意味はあるのだろうか? ナイフは死体の右脇腹に刺さっている。
「あれ? 俺が最初に見つけたとき、ナイフは左脇腹に刺さっていたような……?」
「おいおい、死体の顔も覚えてないような奴が何言ってんだよ。そこにある鏡に映った死体でも見たんじゃねえの?」
部屋の壁には大きな鏡が掛けてある。確かに鏡に映った死体なら左右が逆になる。
「あの……ちょっといいですか?」
今度は中年が思いついたように呟いた。
「死体に刺さっているナイフですけど、右脇腹から内側に向かって刺さってますよね。これって犯人は左利きの可能性が高いってことじゃないですか?」
犯人は左利き。これは犯人を特定する手掛かりになるかもしれない。
「おい、お前ら利き手はどっちだ?」
「アタシは右……」
「嘘をつくな。お前の部屋に置いてあったギター左利き用だったろ」
「ちっ、ばれたか」
「わ……私は右利きです」
「俺は両利きだ」
中年と長身の男が順に答えた。どうやら嘘は言っていないようだ。
「ちょっと待ってくれよ! 犯人は被害者を絞殺した後にナイフを刺したんだろ? それなら利き手は関係ないだろ」
確かに身動きを封じた後なら、どちらでも刺せるだろう。しかし、犯人は何のために死体にナイフを刺したのだろうか?
途方に暮れる俺達を乗せて、『まつがぜ』は闇の中を走り続ける。
問題
寝台車で発生した殺人事件の犯人は誰か推理してください。
解答方法
犯人の名前をフルネームで入力してください。
偽名ではなく本名を入力してください。
※ 問題中に使用されている人名、地域名、会社名、組織名、製品名、イベントなどは架空のものであり、実際に存在するものを示すものではありません。
第五話『煉獄の闇』への最新コメント
[113781] (無題)
投稿者::えんぺち◆[727a2b0]#[正解者] 投稿日時: 2012-02-20 21:38:47
ありがとうございました。[113479] (無題)
投稿者::斧◆[d4ee1fb]#[正解者] 投稿日時: 2012-02-07 23:13:38
刺されて出血して気絶した犯人が[112729] (無題)
目を覚まして元気に人殺しですか…
これではミステリーではなくファンタジーです
投稿者::ひな◆[b88cbfd]#[正解者] 投稿日時: 2012-01-15 13:03:15
解けました。。。[112495] 良い!
投稿者::hondatiro◆[f49639a]#[正解者] 投稿日時: 2012-01-05 14:29:32
おお。これはいい問題ですね。[112430] (無題)
うまい!!
投稿者::すけきよ◆[5c8ea1e]#[正解者] 投稿日時: 2012-01-04 00:55:49
面白かったです。
第五話『煉獄の闇』の情報
問題作成日:2012-01-03
解答公開日:2012-04-03最終更新日:2012-01-04 21:19:04(更新回数:4)
更新内容:
正解率:14% (正解回数:158 解答回数:1113)
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