頭の運動

問題No.1212 【推理クイズ】コカトリスの卵(前編)

出題者:鼻ふぇち◆[4fc9585]

 ある嵐の夜、一人のまだ若い学者が古びた洋館を訪れた。
 この館の主こそ、その昔、空想と現実を交錯した研究をしたという理由で学会を追われたドクトル・ハギノその人である。
 この若い学者は、先日の広告でこの研究所の助手を募集していることを知り、胡散臭くはあったものの多額の報酬に惹かれて応募したのだ。採用の通知には「キミに決めた、すぐ来い」とだけぶっきらぼうに書いてあった。
 扉の前に立ち、インターホンで呼び出すと、「入り口は開いているから入ってこい」との指示があった。重い扉を押して中を覗いても、初めは暗くてよく様子がワカらなかったが、丁度稲妻の光が窓から差し込んだ時、恐ろしい光景が照らし出された。
 苦悶の形相で、喘ぐように身をよじらせた白衣姿の男がそこに立っていた。それが石像だと気がついて尚、彼の心臓の鼓動は乱れっ放しだった。
 「それは、君の前にワシを手伝っていた助手のカワり果てた姿じゃよ!」
 しわがれてはいるが、妙に耳に残る声を突然かけられたので、学者の心臓は休むヒマすらも与えてもらえなかった。逃げ出したいキモチを抑え、暗さに慣れてきた目を声の方へ向けると、眼光の鋭い白衣姿の老人が彼を見据えていた。
 「よく来てくれた。ワシがハギノじゃ。その男は、数日前にコカトリスにやられ、石にされてしまってな。急遽新しい助手が必要だったのじゃよ。」
 「コカ・・トリス・・ですって?」
 「左様、存ぜぬか? コカトリスは、雄鶏が産んだ卵をヘビが温めると誕生するニワトリとヘビの合いの子のような生物で、彼らと視線を合せたり、その体に触れたものはいかなる生物であろうとも石に変えてしまうという獰猛な性質を持っておる。」
「いや、コカトリスの伝説自体は何かで読みましたが、それは神話やファンタジー小説の中だけの話でしょう?」
 学者が尋ねると、ドクトル・ハギノは不敵な笑みを浮かべた。
 「フフン、凡人はそう思っているかも知れん。だが、ワシは長年の研究の末にとうとうコカトリスを誕生させることに成功したのじゃ! 彼らはもう空想の生物ではない。」
 ハギノの狂気に満ちたようなその顔をみて、若い学者は思わず息をのんだ。
 「・・で、そのコカトリスは今どこに・・?」
 「逃げちゃった」
 「ハァ?」
 
(後編に続く)



※ 問題中に使用されている人名、地域名、会社名、組織名、製品名、イベントなどは架空のものであり、実際に存在するものを示すものではありません。

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コカトリスの卵(前編)の情報

問題作成日:2006-10-17
解答公開日:2007-04-17
正解率:10% (正解回数:29 解答回数:269)

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